私は先日、2番目のツタヤ図書館である海老名市立中央図書館に行ってみました。
海老名市立中央図書館はCCC(カルチャーコンビニエンスクラブ)が運営する通称「ツタヤ図書館」の二番目です。ちなみに一番目は九州の武雄市に一昨年の4月に開館した。
Twitterでは開館当初から三島由紀夫の「金閣寺」や新田次郎の「八甲田山死の彷徨」が「旅行」コーナーにあるなどのユニークな書籍分類が話題になっていたのを目にした人も多いでしょう。
建物の中に入ってまず仰天。入ってすぐ左手にスタバがあってしかも結構混んでいる。そして正面から右手には書店だ。もはやモールのようでとてもじゃないが図書館には見えない。
よく見てみると床に ←販売 図書→ とかいてある。しかしどこからどこまでが販売でどこからどこまでが図書かすごくわかりずらい。これでは売り物を買おうとしたりその逆をしてしまう人が多発しそうだ。右のほうに窓口があるから貸し出しかと思ったらレジ。これはものすごく導線がわるい。間違って買わせるのが狙いかと思いたくなるほどだ。
次に2階だ
2階についてまず驚くのがおしゃれさだ。明るい色の本棚にきっちり詰め込まずにおしゃれに並べられた本。ゆったりとした椅子。しかも館内は飲食可能らしくみんななにかを飲みながら本を読んでいる。しかもFree Wi-Fiも完備。もはや旧来の図書館のイメージを根本から覆すようなスタイリッシュさ。これがツタヤ図書館か。
3階も同じような感じ。本棚もまっすぐなものがただひたすら並んでるだけではなくコの字型になっていたりと威圧感を感じない。
4階は改装前はプラネタリウムがあったらしいが今は子供図書館になっている。もともとプラネタリウムというだけあって円く低い本棚が並んで中心に土足禁止の読書スペースがあるという構成。だけどまわりの壁の本棚は大人でも本をとるのが難しいほどの高さ。これはどうなのだろうか。
さらにここにも蔦屋書店のコーナーがある。子供用のおもちゃなどが並んでいるのはここで子供が親にねだるのを期待しているのだろう。
地下一階はいままでとくらべてまだ普通の図書館っぽい。だけど嫌に高い天井と本棚、高いところの本棚には本物の本ではなくダミー本が並んでいる。しかも司書のためのカウンターがない。
開館直後の目新しさというのを差し引いても来館者は多く、武雄市のツタヤ図書館の年間の来館者数が今までの3倍になったというのもうなずけます。
特徴は他にもある。貸し出しを市民のみから全国まで拡大したことだ。これによって藤沢市民の私も海老名市の図書館の本を借りることができる。
しかも年中無休、開館時間は午前9時から午後9時までの12時間とかなり長い。もはや大学図書館並みだ。公務員が運営していてはできない芸当です。
しかし。これでいいのか。
蔵書は手に取りやすい本が多くスタバのコーヒー片手に飲むのにはもってこいだろう。専門書は少なく大衆本が目立ち、マンガこそないもののそれに匹敵するほど軽い読み物が幅を占めている。。しかし図書館とはそんなジャンキーな場所でいいのか。
書架の配置もL字型やコの字型の本棚が入り混じりどこにどんな本があるかすごくわかりづらい。一目見てどういった順番で本が並んでいるのかわからないというのは図書館としては致命的な欠陥だろう。
また、高い棚が多いのも特徴だ。壁の本棚は一番上の1段は落下防止バーのようなものがあるせいで市民が自由に取り出せない。ここにある本を読みたい場合は係員に頼んで出してもらわないといけないのだ。開架図書を大幅に増やしたのを売りにしているが実際は背表紙が見えるだけで結局頼まないと読むことはできない。
地下一階や中央の吹き抜けはもっとひどい。なんと上のほうの棚は全部背表紙だけのダミー本で埋め尽くされているのだ。その理由について海老名市中央図書館長はこう語っている。
「高い位置に本を置くとCCCの図書館運営の”反対派”に本をとるように何度も頼まれるから」(H27・10・24 神奈川新聞朝刊)
なんとも市民を馬鹿にした話だ。「ご利用になられる場合は係員にお声がけください」とあるのに声をかけて取ってもらったら”反対派”扱いだ。正当な市民の権利を行使することを”反対派”による営業妨害行為と断じているのはさすがに開いた口が塞がらない。
ちなみによくみると中央の吹き抜けには数段分だけちゃんとした本が入っている場所がある。遠くて本のタイトルはほとんど読めないが目を凝らしてみると中でも特に分厚い本の背表紙の大きい文字だけはかろうじて読めた。どうやら郷土資料本らしい。郷土資料本の類がやけに少ないと思ったがまさかこんなところにあったとは。係員用のキャットウォークが一応あるので頼めばとってもらえるのだろうが、タイトルが分からないのでは頼みようがない。双眼鏡かオペラグラスを使うしかないのだが、そうまでしてタイトルを確認して頼んだら確実に”反対派”の妨害活動だと思われるのだろう。
さらに図書の整理番号や分類は全国共通のNDC分類ではない独自の物を用いている。そのせいで従来の図書館になれている人にとってはかなり本が探しづらい。しかも分類基準があいまいなためほしい本がどのジャンルにあるのかとっさにわからない。これは司書も同じらしく市民に本の位置を聞かれた司書が本を探して右往左往するのがよく見られた。
雑誌や新聞のコーナーは小さくわかりづらい。しかも新聞は9月24日以降、雑誌は10月号からしかない。どうやら改装してる間は購入してなかった上にバックナンバーは破棄したようだ。いくら何でもふざけ過ぎだろう。
雑誌の種類が少ないのも気になるがこれについては一階の蔦屋書店の販売用のを読めるから図書館に置く必要はないということらしい。もはやどこから突っ込んでいいのかわからない。
郷土資料本などの小難しい本は奥に追いやられている上に根本的に数が少ない。佐賀に引き続き海老名でも郷土資料本を破棄したのではないかと心配になるほどだ。
しかも館内は基本飲食自由、大判の資料本もコーヒー片手に扱うこともできる状態だ。図書館というのは普通は飲食禁止であるのは言うまでもない。大切な本が飲み物で汚れたら一大事だからだ。しかしここは違う。本を貴重な資料ではなく単なる消耗品としか見てないとしか思えない。
かつて国分寺もおかれた県内でも有数の歴史ある街の歴史資料が危機に瀕しているのは間違いないだろう。これを知ったら大学教授や学芸員は卒倒しそうになるのではないだろうか。せめて郷土資料のコーナーだけでも飲食禁止にしてほしいものだ。
また館内は全体的に騒がしい。そりゃそうだろう。スタバや本屋がある部分は吹き抜けになっていて2階3階まで声が響くのだから静粛性など端から考えてないとしか思えない設計だ。そもそも音楽が流れているのだから静粛性もくそもないわけだが。これでは静かに落ち着いて本を読むのは不可能だ。
スタッフも全然足りていない。開館からまだあまりたっていないこの時期は新体制になれてない市民から質問が多くなるのは誰でもわかることだと思うのだが、なぜか一つの階に原則一人しかスタッフがいない。当然その一人だけのスタッフに質問等は集中する。 一時間ほどみていたが次々に声をかけられて館内をずっと走り回っていて待機スペースにいる時間はほとんどなかった。私も一度声をかけて質問しようと思ったのだがあまりにも忙しそうで声をかけづらく、結局声はかけなかった。さすがにスタッフをもう少し増やしたほうがいいだろう。
ところで、図書館全体で数人しかいないスタッフは海老名市の公務員なのだろうか。それともTSUTAYAの社員なのだろうか。正規雇用なのだろうかそれとも非正規雇用なのだろうか。
またこの中に図書館司書の資格を持っている人は何人いるのだろうか。
貸し出しカードはTポイントカードで借りるとポイントがたまるらしい。私はまだ借りてみてないのでどれほどポイントがつくのか知らないがなんと馬鹿げたことか。これで貸し出し数が増えたって誇るつもりなのだから嫌になる。そもそも公共施設のサービスを利用するには民間企業に個人情報さらさないといけないというのは問題だろう。海老名市は市民の個人情報をCCCに売り渡したといっても過言ではない。
そもそも一定の企業群が採用するポイントを公共施設で配布するというのはいかがなものだろうか。武雄市においてツタヤ図書館の開館前後のコンビニの会社別分布図を見てみたいものだ。これでセブンやローソンが減ってファミマが増えていたら大問題である。
ツタヤ図書館は来館者を増やすためのなりふり構わない方策で図書館の大事なものを失ってしまっているように思える。図書館の最優先事項は市民の憩いの場ではないし、市民の憩いの場であるために図書館本来の目的を見失ってはいけないのだ。
武雄市のツタヤ図書館は来館者数が以前の3倍になったと誇っているが、図書館の善し悪しの指標として来館者数はどうなのか。当然来館者数は多いにこしたことはないが増やすために無理な改革をするほどのものではないと思うのだがどうだろうか。
ところで、本を読まずにただスタバに来ているだけの人も相当数いると思われるが。それらの人も当然”図書館”の来館者数に含まれてますよね?
まったく馬鹿げてる。
「スタバにコーヒー飲みに来た人」や「スタバに来てみたら本が置いてあったから読んでみた人」を図書館の来館者数にカウントして入館者数が以前の3倍などと誇るのは図書館として間違っているだろう。
一つの箱に一つの機能よりも一つの箱に複数の機能を付けたほうが来る人が多くなるのは当たり前だ。たとえもともとの機能が犠牲になったとしても。
現状では図書館というよりブックカフェといったほうが近いような状態だ。
学生やノマドワーカーには確実に歓迎されているだろう。
ブックカフェはブックカフェで需要のはわかる。しかしこれは図書館とは別に作るべきものであって図書館を改装して作るものではない。
海老名市長の愚かな判断により海老名市は図書館を失ってしまったといっていいだろう。
CCCは図書館は商業施設ではなく公共施設であるということを思い出していただきたい。
リンク:
海老名市立図書館HP
https://ebina.city-library.jp/library/
武雄市図書館HP
https://www.epochal.city.takeo.lg.jp/winj/opac/top.do
元武雄市長樋渡啓祐氏のブログ
http://hiwa1118.exblog.jp/
10月24日 加筆しました。
10月25日 関係サイトリンクを追加
11月2日 誤字修正
> 貸し出しカードはTポイントカードで借りるとポイントがたまるらしい。
返信削除武雄市図書館ではそうなのですが、海老名市立図書館ではポイントもたまらないのにTカードを採用しています
海老名ではたまらないのですか!知らなかったです。もはやメリット0ですね。。。
削除「郷土資料本などの小難しい本は奥に追いやられている上に根本的に数が少ない。佐賀に引き続き海老名でも郷土資料本を破棄したのではないかと心配になるほどだ。」と記載されています。いい意味でも悪い意味でも図書館の特徴がでていますね。また「図書館全体で数人しかいないスタッフは海老名市の公務員なのだろうか。それともTSUTAYAの社員なのだろうか。正規雇用なのだろうかそれとも非正規雇用なのだろうか。またこの中に図書館司書の資格を持っている人は何人いるのだろうか。」という疑問点に関しての1つの状況例として佐賀県の武雄図書館に以下の【参考3】『ような状況がありそうです。指定管理制度における指定管理業者の情報漏洩でしょうか。すくなくとも図書館司書の責任ではなさそうです。
返信削除【参考1】『山尾しおり「Tカード」令状なく捜査当局に情報提供1/23 衆院・法務委』(h)ttps://www.youtube.com/watch?v=RezEN7O-PXkを視聴しました。
「警察庁では令状なしで(武雄図書館を含む)図書館にたいして特定個人の利用履歴をもとめることはあるのですか。」という質問に対して官房審議官は「都道府県警察が図書館に対して利用履歴を求めた事例に関しては報告をうけていない。」と答弁しています。また、「報告を求めたけれどないと把握しているのか、事実の有無に関して把握しないのか。」という質問に対しては「事実関係を把握していない。」と答弁しているようです。ただし、「図書館が照会書で貸出履歴を開示してしまったということに関しては新聞記事にもなってしまっていた。」ということらしいです。
【参考2】『武雄市図書館(佐賀県)、お知らせ「当館におけるTカードの個人情報および貸出履歴の管理について」を発表』(https://current.ndl.go.jp/node/37510によると、『2019年1月25日、武雄市図書館(佐賀県)は、「武雄市図書館をご利用のみなさまへ」と題し、お知らせ「当館におけるTカードの個人情報および貸出履歴の管理について」を発表しました。Tカードによる図書の貸出や自動貸出機を利用した場合のTポイントの付与において、個人情報や貸出履歴を、Tカードを展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(CCC)に提供していないことを説明する内容です。』と記載されています。
【参考3】『スターバックスが入ったお洒落な「武雄市図書館」に行ってみた!』
(h)ttps://www.youtube.com/watch?v=7pSoB9Duy4Uを視聴しました。
2021年3月時点で「武雄市図書館に来たことがない(関東の)人の情報に関して言うことは私たちにとっては情報漏洩ではない。」といっている人は工事をしている業者や通行人であって武雄市図書館の職員ではないようです。図書館内の状況では(多少??)情報漏洩がないとは言えない状況があるといっている人がいますが、図書館の利用履歴に関しての情報漏洩ではなさそうです。ここで疑問なのですが、武雄市図書館内にいた人たちはどのような関係者であり、どのような手段を用いて誰のなんの個人情報に関することを話していたのでしょうか。個人情報の漏洩をしているのは図書館の職員ではなく、別の業者や関係者である可能性が高そうです。しかしながら、個人情報漏洩の状況がないといえないのも確かなようです。ある意味で不祥事や汚職になりそうな「闇業務」や「闇バイト」をしている関係者が武雄市図書館内に出没しているという状況があると考えられます。