2015年10月28日水曜日

ツタヤ図書館 資料から見えてくる本当の姿 ①武雄市図書館の資料の廃棄と購入

 この記事は当初はツタヤ図書館の諸問題について順を追って一つ一つひも解いて考察することを目標に執筆を始めましたが当初の予定より長くなり、また時間がかかることが予想されたので書きあがった部分から順次公開していくことにしました。
この記事はあくまで暫定版です。現在執筆中の箇所との整合性などの都合で予告なく変更することがあります。
変更ログはリンク集のさらに下に作る予定です。

以下本文



2013年4月に佐賀県武雄市に第一号、2015年10月に神奈川県に海老名市に第二号を開館し、今後も山口県周南市等に開館しようとしているツタヤ図書館。
 従来の図書館の概念を根本から覆したこのツタヤ図書館は武雄市に開館した直後から世の中の注目を浴びてきました。一時期は報道等は落ち着いていたものの今月頭に海老名市に二番目のツタヤ図書館が開館したことでまた再び注目されている。
 私は様々な報道や関係者の個人ブログなどから”ツタヤ図書館”の本当の姿をさがしてきました。



 ツタヤ図書館は開館してから数々の利点が評価されつつも多くの問題点が指摘されてきた。
 ツタヤ図書館の利点と問題点は本ブログの以前の記事を参照してもらうとして、なぜこんなことになってしまったのかを紐解いてみる。



 「武雄市のときはど素人でした」海老名市中央図書館の館長に就任した高橋聡・CCC図書館カンパニー長の言葉だ。なるほど、確かに「ど素人」としか思えない失敗を数多くしている。




 図書館の役割とは何なのか。まずここから間違いが始まる。


 2014年の2月28日。ある方の開示請求によって、 武雄市図書館・歴史資料館の改修にあたって廃棄された蔵書・視聴覚資料の一覧 が明らかになった。破棄されていたのは5506点の書籍と3254点の音声及び映像資料。その中には大量の新聞の縮擦版や雑誌のバックナンバー、地形図など、そして貴重な郷土資料が多数含まれていた。
 
 まず雑誌だが廃棄されていた雑誌の中には長期間保存する必要があるか微妙なものもあるが週刊新潮や週刊文春などのものも大量に破棄されている。しかも10年前みたいな古いものではない。確認できた中で一番新しいものは週刊新潮と週刊文春でともに2012年10月18日号だった。
 武雄市図書館がツタヤ図書館へリニューアルするために閉館したのが2012年11月1日だから所蔵するバックナンバーをすべて破棄したようだ。ほかの雑誌も調べてはいないがおそらく同じ状況だろう。しかしほとんどの雑誌は日本全国の他の図書館で大切に保存されているはずだからまだいい(よくはないが)。

 問題なのはこっちだ。佐賀県では平成24年4月から公共図書館雑誌分担保存を行っていた。
 公共図書館雑誌分担保存とはすべての図書館ですべての雑誌を長年保存するのはスペース的に無理があるとして長年保存する雑誌を各図書館で分担することだ。武雄市図書館も公共図書館なのでもちろんこれに参加していた。が、公共図書館雑誌分担保存で武雄市図書館で担当していた7つの雑誌ももれなく破棄しているのだ。
 どの図書館でどの雑誌を保存するかは「佐賀県内公立図書館の雑誌分担保存に関する協定書」でもって決められているのだがこれを無視して破棄したのだ。公共図書館としての義務を放棄したことになる。

 次に郷土資料だ「季刊みを」おそらく聞いたことがある人はほとんどいないだろう。これは佐賀の郷土文化誌だからだ。この雑誌は他県で保存されていないのはもちろん、佐賀県内でも数えるほどしか保存されていないのだ。こういった貴重な雑誌すら破棄している。
 さらにひどいのはこれだ。「コスモス」「かささぎ」「扉」これらは上記と同じ郷土文芸誌だがこれらは以前の武雄市図書館では永年保存資料指定されていたものだ。これらは寄贈本となっていることからおそらく同人文芸誌と思われる。これらの本はおそらく公共図書館に保存されていたのはこの一冊のみだろう。こういった資料も多数破棄している。

 ついでに音声、映像資料についても触れておこう。
 破棄された音声、映像資料の中にはかなり新しいものも多数含まれている。とくにこの傾向は映画に置いて顕著だ。確証はないがこれは後日館内の一部スペースをツタヤの貸し出しコーナーにしたことと関係あるのではないかと私はにらんでいる。
 つまりツタヤの貸し出しコーナーのCD、DVDを借りてもらうには無料で借りられる図書館の資料があってはダメなのだ。くり返しになるがこれは確証はない。が、私はこの説が正しいと確信している。


 代わりに購入された本もまた惨憺たるものだ。

 改修に当たり新たに購入された書籍は9859冊。これらの本はすべて中古本で賄われた。ツタヤ図書館にするメリットの一つとしてひようの削減というのがあったが、書籍の購入を新品ではなく中古品で行うことで削減するようだ。しかもどこから購入したかというとCCCの傘下のネットオフからである。従来は地域の書店から購入していたところを系列会社から中古で購入するというのは地元との関係を切った上に著者や出版社にに一銭も金が入らない、そしてグループは潤うという三悪だ。
 しかも購入した本の中にはなぜ購入したのが不明なものも多くある。例えば有名なものだと埼玉のラーメン本だ。佐賀県にある武雄市とは縁もゆかりもない遠い地埼玉のラーメンガイドを8冊も購入しているのだ。しかも8冊とも違う年のもので一番古いものは1997年だ。他にも同じラーメン本シリーズの千葉と多摩も数冊づつ購入している(ちなみにこのシリーズは関東地方のみなので佐賀の物はない)。他にも「エラーが分かるとWindows98/95に強くなる」や、「パソコン検定試験“P検オフ”99」など今更購入したところで誰が読むのかわからない本も多い。また、ハウツー本やダイエット本、家庭の医学などが多いのも特徴だ、一方で物語本がほとんどないのも気になる。
 系列会社のネットオフの在庫処分品を買い取ったのではないかとうわさされるのは仕方ないことだしおそらくこの噂は正しいと思われる。

 それ以降も本の購入は継続して行っているいるようだがどこから買っているのかははっきりしない。未だにネットオフから購入しているのだろうか。


 貴重な郷土資料本を破棄した代わりに買ったのは縁もゆかりもない地のラーメンガイドとは一体どういうことだろうか。もはや図書館としての基本的な役割を放棄したといっても過言ではないだろう。
 CCCは図書館をタダで本を読める場所としか思っていないのではないか。しかも図書の価値を多くの人に借りられたかどうかでしか判断していないのは「リニューアル以降一度も借りられていない1630冊を不適切とし選書し直す」という声明から見ても明らかだ。

CCCは明らかに図書館の意義をりかいしないで武雄市図書館のリニューアルを行ったのはまず間違いないだろう。確かに「ど素人」だ。



②なぜ樋渡市長はツタヤ図書館を作ったのか(仮題)へ続く

参考文献
神奈川新聞2015年10月24日朝刊
神奈川新聞2015年10月25日朝刊
東洋経済2015年10月31日号
沸騰!図書館 100万人が訪れた驚きのハコモノ 著:樋渡啓祐

参考リンク集
海老名市立図書館HP
https://ebina.city-library.jp/library/

武雄市図書館HP
https://www.epochal.city.takeo.lg.jp/winj/opac/top.do

武雄市図書館-Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AD%A6%E9%9B%84%E5%B8%82%E5%9B%B3%E6%9B%B8%E9%A4%A8

武雄市図書館・歴史資料館の改修にあたって廃棄された蔵書・視聴覚資料の一覧
https://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/%e4%bd%90%e8%b3%80%e7%9c%8c%e6%ad%a6%e9%9b%84%e5%b8%82%e3%81%ae%e5%95%8f%e9%a1%8c%e3%81%ab%e3%81%a4%e3%81%84%e3%81%a6%ef%bc%9atakeoproblem/%5b%e6%ad%a6%e9%9b%84%e5%b8%82%5d%20H26-02-28%20%e6%ad%a6%e5%b8%82%e6%95%99%e6%96%87%e7%94%9f%e7%ac%ac157%e5%8f%b7%20%e6%ad%a6%e9%9b%84%e5%b8%82%e5%9b%b3%e6%9b%b8%e9%a4%a8%e3%83%bb%e6%ad%b4%e5%8f%b2%e8%b3%87%e6%96%99%e9%a4%a8%e3%81%ae%e6%94%b9%e4%bf%ae%e3%81%ab%e3%81%82%e3%81%9f%e3%81%a3%e3%81%a6%e5%bb%83%e6%a3%84%e3%81%95%e3%82%8c%e3%81%9f%e8%94%b5%e6%9b%b8%e3%83%bb%e8%a6%96%e8%81%b4%e8%a6%9a%e8%b3%87%e6%96%99%e3%81%ae%e4%b8%80%e8%a6%a7.pdf

佐賀県内公立図書館の雑誌分担保存に関する協定書
https://docs.google.com/file/d/0B0Gno61dI_EaQTlpMEhfWGZpZ3M/edit

関連会社から“疑惑”の選書 武雄市TSUTAYA図書館、委託巡り住民訴訟に発展〈週刊朝日〉
http://www.excite.co.jp/News/society_g/20150903/asahi_20150903_0001.html

武雄市図書館・歴史資料館の改修にあたって購入された資料の一覧
https://www.nantoka.com/~kei/TakeoReferences/%E5%AF%84%E8%B4%88%E8%B3%87%E6%96%99/%5B%E6%AD%A6%E9%9B%84%E5%B8%82%E6%95%99%E8%82%B2%E5%A7%94%E5%93%A1%E4%BC%9A%5D%20H27-07-13%20%E6%AD%A6%E5%B8%82%E6%95%99%E7%94%9F%E7%AC%AC66%E5%8F%B7%20%E5%88%9D%E6%9C%9F%E8%94%B5%E6%9B%B8%E5%85%A5%E3%82%8C%E6%9B%BF%E3%81%88%E8%B2%BB%E3%81%A7%E8%B3%BC%E5%85%A5%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E8%B3%87%E6%96%99%E4%B8%80%E8%A6%A7.pdf

大批判の渦中、ツタヤ図書館が身内の中古書店から“無用の100円本”を大量購入
http://news.livedoor.com/article/detail/10558852/

CCC/武雄市図書館の蔵書について反省
http://ryutsuu.biz/strategy/h091113.html

武雄市図書館の選書でCCCが異例の「反省」 愛知県小牧市「TSUTAYA図書館」計画は住民投票へ
http://www.huffingtonpost.jp/2015/09/10/takeoshi-ccc_n_8117678.html



201510282034 タイトル変更

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